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第144回 森林研究所の散歩道(ホオノキ、オガタマノキ編)
第144回 森林研究所の散歩道(ホオノキ、オガタマノキ編)
第144回の今回は、ホオノキとオガタマノキについて紹介します。
ホオノキはモクレン科モクレン属の落葉高木です。日本と中国に分布し、国内では北海道から九州の温帯に自生します。山地や丘陵の林内で見ることができます。寒地に多いそうで、岡山県では北部に分布しています。
高さ30m、直径1mに達することもあります。葉も大きく、単葉としては日本産の樹木の中でも最大級で、長さは30cm以上になります。また、若葉は紅色を帯びており、美しい色合いをしています。
5~6月につく花も非常に大きく、直径20cm以上になることもあるようです。黄白色の花は芳香があり、大きく迫力がありますが、花の寿命は短いようです。
乾かした葉を水に浸して、味噌を包んで焼いた朴葉味噌は有名です。昔から葉に食べ物を盛り付けていたため、ホオガシワと言う古名があります。
また、漢方としても用いられており、厚朴という漢方が中国からあまり輸入されないため、その代用として和厚朴という名で用いられています。胃腸や咳止め、利尿に効果があるようです。
(出典)石井(2000)樹に咲く花.山と渓谷社.p380.
永田(1997)樹木.山と渓谷社.p289.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p95.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p109.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編2.保育社.p218.
奥田(1982)岡山の薬草.山陽新聞社.p272.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p17.
写真1 ホオノキ 写真2 ホオノキの花
(写真1、2は2023年5月11日に撮影)
オガタマノキはモクレン科モクレン属の常緑高木です。関東地方から沖縄にかけての暖温帯から亜熱帯に分布します。沿海の照葉樹林内で稀に見ることができます。神社に植えられていることが多いです。
枝は多く分かれ葉はよく茂ります。また若枝や葉柄、冬芽には金色を帯びた毛があることが特徴です。
2~4月にホオノキのものと似た直径3cmほどの香りの強い花を咲かせます。同様に樹皮や葉にも芳香があるようです。花被片(花びら)の基部は紅色を帯びます。
和名の由来は、本種を神前に供えて神霊を招く招霊(おきたま)という言葉がなまってオガタマに変化したと言われています。神事にはよく使われていたようで、現在主に使われているサカキは本種の代用として用いているとの説もあるそうです。実際に京都市にあるスポーツの守護神として有名な白峯神宮には樹齢800年と言われるものが存在しています。
また、全体的に芳香があるため、大師香(ダイシコウ)の別名でも呼ばれるそうです。
(出典)牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p96.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p102.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編2.保育社.p216.
石井ら(2000)樹に咲く花 離弁花1.山と渓谷社.p384.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p146.
白峯神宮.霊木 小賀玉の木.http://shiraminejingu.or.jp/keidai/reiboku/ogatama/ (2023年9月27日閲覧)
写真3 オガタマノキ 写真4 オガタマノキのつぼみ
(写真3、4は2023年5月11日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。