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第145回 森林研究所の散歩道(ランシンボク、アカメガシワ編)
第145回 森林研究所の散歩道(ランシンボク、アカメガシワ編)
第145回の今回は、ランシンボクとアカメガシワについて紹介します。
ランシンボクはウルシ科ランシンボク属の落葉高木です。中国原産で、日本には公園樹や庭木として稀に存在しています。
高さ15~25mまで成長します。偶数羽状の葉や枝には特有の香りがあるそうです。4月に花が咲きますが、この属の花には花弁がありません。秋には赤~黄色に紅葉し、非常に鮮やかなため、主に紅葉が楽しまれています。
岡山県備前市にある閑谷学校には、中国山東省曲阜にある孔林(孔子の墓所)から持ち帰った種子から育てられたランシンボクが2本あります。別名であるカイノキ(楷の木)として、公式HPに見事な紅葉時の写真が載せられています。
最近スイーツなどでも使用されるピスタチオは同属であり、近縁です。
(出典)太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花2.山と渓谷社.p293.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p267.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p109.
特別史跡旧閑谷学校.史跡各所案内 6 楷の木 http://shizutani.jp/ja-map/ (2023年9月27日閲覧)
写真1 ランシンボク 写真2 ランシンボクの実
(写真1、2は2023年5月23日に撮影)
アカメガシワはトウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木です。日本や朝鮮半島、台湾、中国に分布します。国内では本州から沖縄の温帯・亜熱帯に自生します。林縁や伐採跡地などの明るい場所で普通に見られます。
写真4のように、枝先に出る新芽や若葉が赤く、名前の由来になっています。明るい場所に多い先駆性樹種であるため幼木が多く存在しており、夏でも若葉を普通に見ることもできるそうです。
幼木では3浅裂する葉が多く、また波状の鋸歯も見られますが、成木では大半の葉が全縁の不分裂葉となります。成木は高さ15m、直径50cmに達し、逆三角形の樹形になるそうです。
カシワの葉と同じように食べ物を盛ることに用いられたため、アカメガシワの名や、五菜葉(ごさいば)、菜盛葉(さいもりば)といった別名も付けられています。
材は薪炭として、また葉や樹皮は乾燥させて胃潰瘍に用いたりと幅広く利用されてきたようです。
(出典)奥田(1982)岡山の薬草.山陽新聞社.p36.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p425.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編1.保育社.p336.
太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花2.山と渓谷社.p204-207.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p254.
写真3 アカメガシワ 写真4 アカメガシワの若葉
(写真3、4は2023年5月24日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。