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第146回 森林研究所の散歩道(コウヨウザン、オオバボダイジュ編)
第146回 森林研究所の散歩道(コウヨウザン、オオバボダイジュ編)
第146回の今回は、コウヨウザンとオオバボダイジュについて紹介します。
コウヨウザンはヒノキ科コウヨウザン属の常緑高木です。中国南部原産で、日本ではやや稀に公園樹や社寺植栽が行われています。
やや湿り気のある場所ではよく育ち、高さ30m、胸高直径2mにも達します。枝はやや垂れ、葉は鎌状にカーブしており、先が硬く尖ります。また、葉はらせん状に付くためとげとげしく、痛いです。
中国では長江以南で古くから造林されており、最も重要な林木として、建築や器具、土木、船、棺材、パルプなど幅広く利用されています。
漢字では広葉杉(こうようざん)と書き、そのまま葉の広い杉という意味かと思われます。昔はスギ科に含められていたため、このような名前が付けられたのでしょう。
また、近年では短期間で成長して早期の収穫が期待される「早生樹(そうせいじゅ)」のひとつとして期待されており、令和4年度の森林林業白書でも紹介されています。近い将来にスギやヒノキのように身近な樹木となるかもしれません。
(出典)城川ら(2001)樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物.山と渓谷社.p620.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p94.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p84.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編2.保育社.p421.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p809.
林野庁(2023)令和4年度 森林・林業白書.p100.
写真1 コウヨウザン 写真2 コウヨウザンの実
(写真1、2は2023年5月23日に撮影)
オオバボダイジュはアオイ科シナノキ属の落葉高木です。北海道から中部地方の冷温帯の山地でやや稀に見ることができます。特に寒地では公園樹や街路樹、社寺植栽として利用されています。
基本的には高さ6~8mですが、大きいものでは25mにもなります。葉は名前のとおり大きく、長さ幅ともに10cmを超え、写真4のように歪んだハート形や円形になります。葉の裏面全体に星状毛が生え、白く見えます。また、秋には黄色く色づきます。
6~7月に葉腋から写真5のような集散花序を出し、淡黄色で芳香のある花をつけます。
材は建築や合板、内樹皮の繊維でこし袋や和紙を作るそうです。
(出典)馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p306.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p521.
貴島ら(1962)原色木材大図鑑.保育社.p100-101.
太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花2.山と渓谷社.p536-537.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p324.
写真3 オオバボダイジュ 写真4 オオバボダイジュの葉 写真5 オオバボダイジュのつぼみ
(写真3、4、5は2023年5月23日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。