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第147回 森林研究所の散歩道(ハリエンジュ、クマシデ編)
第147回 森林研究所の散歩道(ハリエンジュ、クマシデ編)
第147回の今回は、ハリエンジュとクマシデについて紹介します。
ハリエンジュはマメ科ハリエンジュ属の落葉高木です。北米原産で世界中に広く植えられており、北海道から九州の温帯に野生化しているようです。河原や道路沿い、原野、海岸でやや普通に見ることができます。
最大で高さ20mほどに成長します。葉は奇数羽状複葉をしており、葉の付いている元には托葉が変化した棘が一対あります。特に若木や徒長した枝の棘は大きいそうです。
街路樹や庭木として植えられたり、また蜜源植物としても良質なため養蜂にも使用されています。しかし地下茎によって増殖していき、在来種を追いやっていることも確認されているため、注意が必要な外来種にもなっています。
本種はニセアカシアとも呼ばれていますが、それは本種の学名の種小名である "pseudoacacia" を直訳したことから生まれました。分類上では属が異なるため、アカシアとは近縁ではありません。
(出典)太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花2.山と渓谷社.p108.
永田(1997)樹木.山と渓谷社.p183.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p199.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編1.保育社.p348-349.
独立行政法人 農業環境技術研究所.外来植物図鑑 ハリエンジュ.https://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/project/plant_alien/book/index_r/robinia.html(2023年10月4日閲覧)
一般社団法人 日本養蜂協会.日本の主要蜜源植物 https://www.beekeeping.or.jp/nectarsources(2023年10月4日閲覧)
写真1 ハリエンジュ 写真2 ハリエンジュの花
(写真1、2は2023年5月8日に撮影)
クマシデはカバノキ科クマシデ属の落葉高木です。本州から九州の主に冷温帯に分布し、山地から丘陵の谷沿いや落葉樹林内でやや普通に見られます。岡山県では北部の鳥取県境付近に自生します。
高さは15m、胸高直径は60cmに達しますが、同属のイヌシデやアカシデほどの大木にはならないようです。葉の葉脈はきれいに平行に並んでいます。
4~5月に、写真4のような独特な形をした花を付けます。この花が終わった後に、葉の部分が大きくなり、ビールに使われるホップのような果穂を付けます。10月頃に熟す果穂は長さ5~10cmで葉状の果苞が密生してつきます。この果苞は、雌花の基部の小苞が花後にさらに大きくなったものです。このミノムシのような果穂は秋の落葉後も枝に残り、そのまま越年することも多いようです。
和名の由来は、同属の中で最も大きな果穂を熊に、果穂が垂れ下がるさまをしめ縄などにつける細長い紙である四手(しで)に例えたことによります。
材は、背もたれなどがカーブを描く曲木椅子や農具の柄、シイタケの榾木(ほだぎ)に使用されます。
(出典)永田(1997)樹木.山と渓谷社.p239.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p402.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p7.
石井ら(2000)樹に咲く花 離弁花1.山と渓谷社.p188.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編2.保育社.p301-302.
写真3 クマシデ 写真4 クマシデの花
(写真3、4は2023年5月8日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。