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第148回 森林研究所の散歩道(コマユミ、ヤマツツジ編)
第148回 森林研究所の散歩道(コマユミ、ヤマツツジ編)
第148回の今回は、コマユミとヤマツツジについて紹介します。
コマユミはニシキギ科ニシキギ属の落葉低木です。北海道から九州の温帯に分布しており、岡山県では中部に自生します。低地から山地でやや普通に見ることができます。
本種はひとつの独立した種では無く、ニシキギの1品種となります。ニシキギの特徴である枝につく板状の翼がコマユミには無いという違いがあります。ただ、コマユミにも太い枝にのみ翼が出る個体もあるようで、その境界は定かではありません。このことからもコマユミがニシキギの一部であることが感じられます。
写真2のように、葉が揃って並んでいるため羽状複葉に見えますが、実際は対生しています。5~6月には、その年に伸びる本年枝の冬芽のあと(芽鱗痕)から集散花序を出し、写真2のように淡緑色の小さな花を付けます。
コマユミの大本のニシキギは漢字で「錦木」と書き、写真3のように秋の紅葉が美しいためそう言われています。また、コマユミは同属のマユミが元であると考えられます。コマユミは樹高1~3mに対し、マユミは3~10mになるため、小さいという意味のコが語頭についたのでしょう。そのマユミは材から弓を作っていたためそう呼ばれています。
(出典)太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花(2).山と渓谷社.p412.
永田(1997)樹木.山と渓谷社.p89.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p408.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p299.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編(1).保育社.p263.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p35.
写真1 コマユミ 写真2 コマユミの花
写真3 コマユミの紅葉
(写真1、2は2023年5月8日に、写真3は2023年10月26日に撮影)
ヤマツツジはツツジ科ツツジ属の落葉低木です。北海道南部から九州の温帯に自生します。岡山県の全域に分布しており、丘陵や山地の林内および林縁、また酸性の場所で普通に見られます。
日本のツツジの代表種であり、最も広範囲に自生します。そのため個体も多く存在しており、変異が多く様々な変種、品種が知られています。花の色は赤色、白色、紫色等があります。
車輪状によく分枝をし、若枝や葉には褐色の毛があります。春と夏に葉がそれぞれ出ます。春葉は大きくなりますが、夏葉は小さいまま越冬します。
4~6月に咲く花は直径5cm程度の漏斗形をしています。花弁の集まりである花冠の上側には濃色の斑点があるようです。
(出典)城川ら(2001)樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物.山と渓谷社.p24.
永田(1997)樹木.山と渓谷社.p92.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種.山と渓谷社.p618.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編(1).保育社.p164.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p48.
写真4 ヤマツツジ 写真5 ヤマツツジの花
(写真4、5は2023年5月8日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。