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第150回 森林研究所の散歩道(タニウツギ、ペカン編)
第150回 森林研究所の散歩道(タニウツギ、ペカン編)
第150回の今回は、タニウツギとペカンについて紹介します。
タニウツギはスイカズラ科タニウツギ属の落葉低木です。北海道西部から本州の冷温帯に分布し、特に日本海側で見られるようです。林縁や低木林などの日当たりの多い場所に自生します。岡山県では北部に分布します。
基部からよく分枝して株立ちになり、高さ5mまで成長します。また、葉裏の全面に白い毛が密生することが特徴です。
5月に、枝先や葉腋から漏斗状の花をつけます。花は初めからピンク色をしており、観賞用に庭園や公園に植栽もされます。花の色が紅色や白色の品種も存在しています。
本属の種子は小さいですが、平たい餃子のような見た目をしています。
和名は谷間に多いことに由来します。
(出典)林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p754.
城川ら(2001)樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物.山と渓谷社.p384.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p383.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編1.保育社.p18-19.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p537.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p60.
写真1 タニウツギ 写真2 タニウツギの花
(写真1、2は2023年5月9日に撮影)
ペカンはクルミ科ペカン属の落葉高木です。ピーカンとも呼ばれており、ミシシッピ川の流域からメキシコ湾南部の原産です。日本でも少数ですが果実を取るために植栽されているようです。
原産地が広く、北米における代表的な野生果樹であり、200種類以上が栽培されていると考えられています。樹高は50mに達することもあるようです。
5~6月に単性の花が開花します。写真4の雄花は大きく穂状になります。雌花は小さく、当年枝の先端に少しつきます。
本種は特に果実が有名で、クルミより甘みがあり、栄養価に富むためお菓子を中心に利用されているそうです。日本でもペカンナッツ、ピーカンナッツと検索すると、数多く販売されていることがわかります。
また、他の殻果類と比べてカロリーが豊富なため、原産地の北米ではカロリーの樹や生命の樹と呼ばれているようです。
実生から結果するまでに10年かかると言われていますが、非常に長く実がなり続けます。
(出典)馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p108.
佐藤ら(1974)果樹園芸大辞典 第2版.養賢堂.p830-833.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編(2).保育社.p345-346.
写真3 ペカン 写真4 ペカンの雄花
(写真3、4は2023年5月9日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。