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第141回 森林研究所の散歩道(ナワシログミ、ヒイラギ編)
第141回 森林研究所の散歩道(ナワシログミ、ヒイラギ編)
第141回の今回は、ナワシログミとヒイラギについて紹介します。
ナワシログミはグミ科グミ属の常緑低木です。東海から九州の暖温帯に自生します。沿海から丘陵の乾いた場所にやや普通に見られます。岡山県内でも中部以南の暖かい場所で確認されています。
高さは1~3mになり、不規則な乱れた樹形になります。葉は革質で厚く、表面は光沢があり、縁は強く波打ちます。葉腋からは棘がでるため注意が必要です。
10~11月の秋頃に、写真2のように葉腋から筒状の淡黄褐色の花が数個つきます。
薬用に使用されており、果実はタンニンを多く含んでおり下痢止めの効果が、葉には咳止めの効果があるようです。
特にグミ属は果実酒の原料に利用されており、その中でもアキグミが良いとされています。
(出典)林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p323.
千葉(1985)岡山の樹木.山陽新聞社.p83.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編(1).保育社.p214.
奥田(1982)岡山の薬草.山陽新聞社.p226.
太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花(2).山と渓谷社.p574.
写真1 ナワシログミ 写真2 ナワシログミの花
(写真1、2は2023年11月27日に撮影)
ヒイラギはモクセイ科キンモクセイ属の常緑小高木です。東北地方南部から沖縄にかけての暖温帯に分布します。岡山県では中部から北部に自生します。
樹高は3~7mになり、生垣に植栽された個体にある棘状の鋸歯がよく思い浮かべられる姿かと思います。しかしヒイラギは幼木の間のみ棘状の鋸歯が存在し、写真3、4のように成木になると全縁のよく見かける葉へと変わっていきます。ですが葉形には変異も多く、せん定を行うと棘状の鋸歯を持つ葉が増えるそうです。そのため生垣にあるものは棘々しいものが多いのでしょう。
11、12月に白色の小さな花がつきます。花は写真4のように葉腋に束生し、良い香りがするそうです。
節分にはヒイラギの小枝とイワシの頭を合わせた柊鰯(ひいらぎいわし)を邪気の侵入を防ぐ目的で戸口に設置する風習があります。
岡山県の方言ではメハジキやメツッパリとも呼ばれています。
(出典)城川ら(2001)樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物.山と渓谷社.p290.
千葉(1985)岡山の樹木.山陽新聞社.p82.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p693.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p54.
米倉(2019)新維管束植物分類表.北隆館.p216.
写真3 ヒイラギ 写真4 ヒイラギの花
(写真3、4は2023年11月27日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。