本文
第151回 森林研究所の散歩道(コヤスノキ、イボタノキ編)
第151回 森林研究所の散歩道(コヤスノキ、イボタノキ編)
第151回の今回は、コヤスノキとイボタノキについて紹介します。
コヤスノキはトベラ科トベラ属の常緑低木です。兵庫県と岡山県の暖温帯にのみ生息します。その中でも主に社寺林に多いことが知られています。岡山県では中部と東部に少数のみが分布しています。
樹高は2~5mほどになります。葉は枝先に集まるようにつき、少し波打ちます。
5月に、薄黄色の小さな花をつけます。1cmに満たない花は、雌雄異株ですが形状はよく似ています。その後トベラと同じようなさく果をつけます。裂開する実の内側はべたべたしています。
和名の子安ノ木(こやすのき)は江戸時代から使われている名で、安産のおまじないに用いられたそうです。また、本種は中国東部の原産です。国内では限られた県の社寺林内に主に知られており、その名の由来からも人為的に伝来したとする説が有力です。
岡山県では美作市の土井神社に県指定の天然記念物であるコヤスノキがあります。
(出典)林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p759.
太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花(2).山と渓谷社.p91.
千葉(1989)岡山の樹木.山陽新聞社.p157.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p21.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編(2).保育社.p99-100.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p185.
岡山県 教育委員会 文化財課.県指定文化財一覧(その6) 史跡、名勝、天然記念物.https://www.pref.okayama.jp/page/detail-50795.html
写真1 コヤスノキ 写真2 コヤスノキの花
(写真1、2は2023年5月18日に撮影)
イボタノキはモクセイ科イボタノキ属の落葉低木です。北海道から九州の温帯に自生し、低地や山地の林縁または林内で普通に見られます。県内では中部に分布します。
樹高は4mになります。葉は長く先は丸まっており、主脈の部分が凹んでいます。落葉樹ですが、暖地では冬も葉が落ちないことがあるそうです。葉の形に変異が多く、樹形も不整形になっています。
5~6月に、新枝の先に長さ3cmほどの白い花をつけます。花冠は筒状で先は4裂しています。
樹皮につくイボタロウムシという虫が分泌する白いロウを溶かしてイボを取ることに使ったためこの名で呼ばれています。そのロウは他にも家具のツヤ出し等に利用されています。
(出典)城川ら(2001)樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物.山と渓谷社.p278.
千葉(1985)岡山の樹木.山陽新聞社.p79.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p686.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p54.
写真3 イボタノキ 写真4 イボタノキの花
(写真3、4は2023年5月18日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。