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第153回 森林研究所の散歩道(イイギリ、モッコク編)
第153回 森林研究所の散歩道(イイギリ、モッコク編)
第153回の今回は、イイギリとモッコクについて紹介します。
イイギリはヤナギ科イイギリ属の落葉高木です。本州から沖縄の温帯と亜熱帯に分布しています。水気のある谷沿いなどに見られますが、個体数は多くないようです。岡山県では県北に数ヶ所が確認されています。
樹高は15m、直径は40cmになります。直立した幹から車輪のように枝を出す樹形が特徴です。葉は三角に似た形をしており、キリの葉に似ています。
4~5月に、長さ20cmの円錐花序が垂れ下がり、良い香りのする淡黄色の花を多くつけます。その後になる小粒の果実はブドウの房に似た形状になります。その実は冬に葉が落ちた後でも樹上に残っており、綺麗な赤色をしているため、美しいです。
かつてはイイギリ科という科が独立して存在していましたが、再定義によってイイギリ科にあった多くの属はヤナギ科へと移動し、イイギリ科は無くなりました。
(出典)林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p454.
太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花(2).山と渓谷社.p606-609.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p44.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p352.
永田(1997)樹木.山と渓谷社.p72.
写真1 イイギリ 写真2 イイギリの花 写真3 イイギリの実
(写真1、2は2023年5月23日に、写真3は2023年12月7日に撮影)
モッコクはサカキ科モッコク属の常緑高木です。日本や東南アジアに、国内では関東地方以西に分布します。海岸の近くの乾いた場所に生育し、岡山県では南部に自生します。
樹高は10m程度で、幹は直立し枝は密生する写真4のような整った樹形になります。葉は写真5のように先端が丸い形をしています。
6~7月に、葉腋から写真5のような1cmほどの花が下向きにつきます。花は初めは白色をしており、後に黄色みを帯びます。その後冬につく実も紅色をしており綺麗です。
樹形が整っているため庭木として好まれ、花や実も美しいので庭木の王様と呼ばれています。
材は緻密で硬く、赤みがかっています。主に建築材や器具材に用いられてきました。特に沖縄では重要な建築材であり、首里城正殿にも使用されたようです。
(出典)太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花(2).山と渓谷社.p186-187.
永田(1997)樹木.山と渓谷社.p265.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p569.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p43.
写真4 モッコク 写真5 モッコクの葉とつぼみ
(写真4、5は2023年5月24日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。