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第156回 森林研究所の散歩道(ガマズミ、ヤブデマリ編)
第156回 森林研究所の散歩道(ガマズミ、ヤブデマリ編)
第156回の今回は、ガマズミとヤブデマリについて紹介します。
ガマズミはガマズミ科ガマズミ属の落葉低木です。日本固有の種であり、北海道から九州の温帯に自生しています。岡山県では全域に分布しています。
樹高は最大で4mになります。葉は約10cmの円形で、鋸歯を持ちますが尖っていません。葉と枝にはざらざらとした短毛が多くあります。葉形は通常円形になりますが、小さくなったり細長くなったりと変異が多いです。
5~6月に、写真2のような直径10cm程度の散房花序を出し、小さな白い花を大量につけます。9~11月になる1cmに満たない赤色の果実は、強い酸味を持ちます。野鳥がよく食べるそうです。
本種の名前の由来についての定説はありませんが、本種の漢名である「莢迷(きょうめい)」が転じたガマの読み方と、また果実の特性である酸味が合わさることでガマズミと呼ぶようになったという説があります。
今回紹介するガマズミとヤブデマリは共にガマズミ属に分類されています。本属はかつてスイカズラ科に含まれており、その後レンプクソウ科へと変更されましたが、最新の分類(Apg4)ではガマズミ科へと名称が変更されています。
(出典)城川ら(2001)樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物.山と渓谷社.p444.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p376.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p724.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p58.
写真1 ガマズミ 写真2 ガマズミの花
(写真1、2は2023年5月17日に撮影)
ヤブデマリはガマズミ科ガマズミ属の落葉低木です。本種もまた日本固有の種で、本州から九州の温帯に自生します。谷沿いなどの湿った場所で見ることができ、岡山県では中部以北で確認されています。
樹高は2~6mになります。ガマズミ属の中では葉柄が長く、鋸歯が鋭いことが特徴ですが、葉形などの変異は多いそうです。
5~6月に写真4のような直径10cm程度の散房花序をだし、中心には小さい両生花が多くつき、その周りを白い装飾花が囲んでいます。装飾花はよく見ると5裂しており、そのうちの一つは非常に小さいです。
8~10月につく果実は1cm未満の楕円形をしており、実が赤くなると実をつけた枝まで赤くなります。完全に熟すと果実は黒色に変色します。
和名の由来は本種が藪に生え、またその花序が手毬(てまり)の形をすることによります。
(出典)城川ら(2001)樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物.山と渓谷社.p470.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p377.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p730.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p529.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p58.
写真3 ヤブデマリ 写真4 ヤブデマリの花
(写真3、4は2023年5月17日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。