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第157回 森林研究所の散歩道(トウカエデ、ニワウルシ編)
第157回 森林研究所の散歩道(トウカエデ、ニワウルシ編)
第157回の今回は、トウカエデとニワウルシについて紹介します。
トウカエデはムクロジ科カエデ属の落葉高木です。中国原産で主に街路樹や公園樹、庭木として利用されています。
樹高は5~15mになります。樹皮が縦に裂けて剥がれることが特徴です。葉はきれいに3裂します。若木のうちは葉に鋸歯がありますが、成木になると全縁となります。秋には赤から黄色に紅葉して美しいそうです。
4~5月に、長さ3cm程度の散房花序に淡黄色の花を20個ほどつけます。そのためひとつひとつの花は非常に小さいです。10月頃に熟す写真2のような翼果はほとんど開かないようです。
街路樹等として植栽されていますが、斑入りの園芸品種もあり、また季節ごとの変化が多く盆栽としても幅広く利用されています。
和名トウカエデの唐は中国を指しており、1720年頃にザクロと共に渡来したそうです。
(出典)太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花(2).山と渓谷社.p364.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p274.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p494.
写真1 トウカエデ 写真2 トウカエデの実
(写真1、2は2023年5月17日に撮影)
ニワウルシはニガキ科ニワウルシ属の落葉高木です。中国原産で、北海道から九州の温帯に野生化しています。林縁などの明るい場所で見ることができ、群生することもあります。
樹高は7~20mになり、樹形は幹が直立し枝葉が傘上に広がるため立派な形になります。羽状複葉をしており、国内で見られる広葉樹の中では最も大きな羽状複葉になります。葉をちぎるとゴマのような臭気がするとあり、あまりよい匂いではありません。
夏から秋には翼果が実り、熟すと褐色になります。その翼は縦方向にねじれており、回転しながら飛ぶことで遠くへ移動します。
和名は木や葉の形がウルシに似ており、また庭に植栽されていることに由来します。名にウルシとつきますが、ウルシ科ではないためかぶれることはありません。他にはシンジュ(神樹)という名前もありますが、神聖な理由で名付けられたわけではありません。元はインドネシアのモルッカ諸島にあるモルッカシンジュを現地の言語で天にも届く巨木であるため天の樹と言い、これがニワウルシ属の属名にもなりました。この言葉がドイツ語に訳され、そこからさらに日本語に訳されたため、このような神々しい名前になりました。
(出典)太田ら(2000)樹に咲く花 離弁花(2).山と渓谷社.p264-265.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p267.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p517.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p277.
上原(1961)樹木大図説(2).有明書房.p704.
写真3 ニワウルシ 写真4 ニワウルシの葉
(写真3、4は2023年5月17日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。