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第158回 森林研究所の散歩道(ユリノキ、スイカズラ編)
第158回 森林研究所の散歩道(ユリノキ、スイカズラ編)
第158回の今回は、ユリノキとスイカズラについて紹介します。
ユリノキはモクレン科ユリノキ属の落葉高木です。北アメリカ原産で、街路樹や公園樹として植栽されています。
樹高は10~30mと大きな木であり、南門からの道路脇にある樹高38mのユリノキは所内で最大のものになります。葉は偶数の4、6裂が入る特徴的な形をしており、写真3のように葉の先が凹んでいます。
5~6月に英名であるチューリップツリーのようにチューリップに似た花をつけます。大きさは5cmほどで、黄色またはオレンジ色をしています。
学名(Liriodendron tulipifera)はチューリップのようなユリの木という意味をしており、和名の由来になっています。他も独特な葉形が半纏に似ているためハンテンボクとも呼ばれています。
材は白黄色をしており用材としての価値は高く、実際に原産地である北アメリカの先住民族インディアンはユリノキからカヌーを作っていたそうです。その成長性と加工性から近年では早生樹としても注目されています。
(出典)石井ら(2000)樹に咲く花 離弁花(1).山と渓谷社.p386.
馬場(2009)花実でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p153.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p110.
上原(1961)樹木大図説(1).有明書房.p1093.
写真1 ユリノキ 写真2 ユリノキの花
写真3 ユリノキの紅葉した葉
(写真1、2は2023年5月15日に、写真3は2023年10月27日に撮影)
スイカズラはスイカズラ科スイカズラ属のつる性木本です。日本や朝鮮半島、中国に、国内では北海道南部から沖縄の温帯に分布しています。林縁などの明るい場所で見ることができます。岡山県内の全域で確認されています。
つるは右巻きをしており、低木に巻き付き1~5mになります。葉や若枝に毛が多く、草に近い印象を与えます。葉形は基本的に楕円形をしていますが、幼木や徒長枝などでは分裂葉になることもあるようです。真冬でも葉が落葉しきらず、越冬するものもあるため忍冬(ニンドウ)の別名があります。
5~6月に、枝先の葉腋に写真5のような唇形の花を2つつけます。花の大きさは4cmほどで初めは白色をしていますが、後に黄色に変わります。そのため白色と黄色の花を同時に見ることができるため、金銀花(キンギンカ)とも呼ばれています。また、花冠下部から蜜を出しており、筒状の部分を吸うと甘いことからスイカズラと名付けられました。
茎や葉、花にも薬効があり、はれものや関節痛に効果があるとされています。いずれも乾燥させたものを服用するようです。
(出典)城川ら(2001)樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物.山と渓谷社.p399.
長岡(1997)野の花・街の花.講談社.p243.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p740.
北村ら(2002)原色日本植物図鑑 木本編(1).保育社.p4.
岡山県農林部林政課(1986)岡山県樹木目録.p60.
奥田(1982)岡山の薬草.山陽新聞社.p172.
写真4 スイカズラ 写真5 スイカズラの花
(写真4、5は2023年5月15日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。