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令和2年度研究テーマ
国等からの外部資金による研究
自動車部品適用のための高強度・高熱伝導マグネシウム合金の開発(戦略的基盤技術高度化支援事業)
輸送機器関連分野では、CO2削減に対応するため、車体重量を軽量化することで燃費の向上を図っている。マグネシウム合金の自動車部材への適用では、構造部材への高強度化と放熱部材への高熱伝導率化の2つが大きな課題となっている。前者は合金への炭化アルミニウムの添加により、後者については高熱伝導合金へのレーザ表面処理を用いて解決を図り、リサイクル可能な合金開発を実現する。
ゴム材料の高性能化を目的とした不均一構造解析に関する研究(特別電源所在県科学技術振興事業)
近年、ナノメートルオーダーで材料の力学特性の分布を評価できる技術が進展し、ゴムの架橋及び補強における不均一構造がゴムの特性を発現するための重要な因子であることが明らかになりつつある。本研究では、未だに構造が解明されていないゴム材料の分子運動の不均一性、及びナノメートルオーダーの空間的不均一性に着目し、不均一構造と力学的物性との関係を明らかにすることで、ゴム材料の物性発現や製造工程におけるイノベーションを目指す。本年度は、伸長下におけるナノ力学物性の空間分布、分子運動性分布の測定手法を確立する。
県単独で実施している研究
洗い加工が繊維の風合いに及ぼす影響
洗い加工を施したデニム製品の人の視覚及び触感に与える効果は、その加工条件によって変化する。デニムを特徴付ける、それらの変化が消費者に訴えかける魅力となる。そのため、消費者に好まれるデニム製品の開発には、各種洗い加工がデニムの触感に及ぼす効果を客観的に把握しておくことが重要である。本研究では洗い加工条件が触り心地に及ぼす影響を調査する。
低コスト・省エネルギー化を可能とする窒化処理法の検討
表面改質技術のひとつに、窒化処理(ガス窒化・プラズマ窒化等)がある。窒化処理は材料表面から窒素を侵入・拡散させ、窒化物を形成させることで、硬度などの表面特性を変化させる。しかし、窒化処理は、CrやV等、窒素と親和性の高い元素を含む高級鋼のみに適用可能であること、処理時間が20~100時間かかるなど、コスト面・エネルギー面での問題点がある。本研究では、低級鋼材に適用でき、かつ、低コスト・省エネルギー可能な窒化処理法の検討を行う。
深度カメラを用いた非接触牛体測定システムの開発
畜産研究所では和牛子牛の資質向上を図るため、和牛繁殖農家の巡回指導において子牛の発育を調査し、飼養管理方法の改善を指導している。現在の牛体測定は、子牛の捕獲及び保定に重労働と時間を要し、牛の衝突を受けるなど作業者の危険も伴う。本研究では、深度カメラを用いることで、非接触で体型を測定し、そこから体重を推定する牛体測定システムを開発する。
次世代電池の製造技術に関する調査及び事業化支援研究
おかやま次世代電池共創コンソーシアムでは「大学の知」を生かした研究開発が進められる。その中で工業技術センターには、「大学の知」と「企業のものづくり技術」をマッチングさせることが求められている。本研究では、次世代電池に関する事業化の支援を目指す。
加工温度に基づく加工力・工具摩耗の評価に関する研究
高精度な加工を効率的に行うには、工具の摩耗状態の把握が不可欠である。これまでの研究によって、工具摩耗の進行にともなって、工具刃先に加わる主分力とその周波数成分が時間的に変化することを確認し、工具寿命を加工力の変化から判断することが可能となった。本研究では、新たに加工点近傍の温度を測定する技術を導入し、温度と加工力、工具摩耗の関連性を調査することで、工具寿命に影響を及ぼす現象の解明に取り組む。
磁界解析を用いたモータの高性能化に関する研究
温暖化・省資源対策としてモータの高性能化に取り組む。本研究では、電気機器開発のためのシミュレーションである磁界解析を活用し、モータの温度上昇や耐熱性を検討する。また、トルクむらについての解析を行い、実機と解析結果の検証を行う。
バイオマス素材の活用技術に関する研究
木質バイオマスを微粉砕処理することにより得られるセルロース系微粉材料を広い用途で用いることを目指し、その表面を化学修飾する技術を開発し、各々の用途に適するよう、その特性向上を図る。また、このセルロース系微粉材料の特性を生かした用途の開発を目指し、高分子材料との複合化技術を開発する。
企業の皆さまと共同で実施している研究
「実用化技術開発事業」と銘打ち、工業技術センターが掲げる研究テーマに対して、毎年、参画企業を募集して共同研究を実施しています。
分析・解析技術に基づいた高分子複合材料の開発
高分子複合材料の高性能・高機能化には、その構造の制御とともに、母材(マトリックス)となる高分子素材とフィラー(無機粉体)や他種高分子材料などの異種材料との複合化が鍵である。本研究では、この複合材料の構造制御技術の基盤となる構造解析技術を開発する。また、その解析技術をもとに高分子(複合)材料の構造を制御する。
清酒製造現場における課題解決に向けた研究開発
国内飲酒人口の減少による清酒製造数量の低下が進む中、特定名称酒を中心に輸出が増加している。今後、これらの高品質化、差別化が、より重要視され、製造の工程における技術力のさらなる向上が求められるが、製造現場では、未だ経験の積み重ねに依存した手作り技術が中心であり、技術力の向上が困難である。本研究では、酒造り技術の高度化を目的に、こうした手作り技術の科学的検証と特性評価に取り組む。
地域資源付与による高付加価値繊維製品の開発
海外からの安価な製品の流入により県内の繊維産業は、厳しい状況下にある。その打開策として国際競争力の強化や高付加価値な製品作りが急務な課題となっている。本研究では、昨年度確立したセルロースナノファイバー(CNF)の固着塗布技術を発展させ、染料や薬剤等を繊維へ浸透固着する技術確立を目指す。
金属加工製品の環境対応・高機能化を可能とする製造プロセス技術の開発
各種産業分野に用いられる金属加工製品のリサイクル性、小型軽量性、易加工性、耐久性の向上を目的に、高品位な組織制御、高精度な成形加工、高機能な表面処理技術による素材の開発及び、それを可能とする製造プロセス技術の確立を目指す。
ものづくりの高度化に向けた計測技術の開発
製造現場では異常診断や運転管理の高度化などを目的に、IoTの導入が進展している。しかし、IoT技術をより有効に活用するには、多種多様な計測データの中から必要な情報を高精度に抽出する技術が求められる。そこで、測定対象の周囲に配置した複数のセンサから得られる信号を用い、直接測定できない物理量を算出する計測技術を開発する。本研究では、工具先端の力計測、乾燥物の品温・水分計測及び管内音波の分離計測を行うための信号処理法を開発する。