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令和3年度研究テーマ
国等からの外部資金による研究
ゴム材料の高性能化を目的とした不均一構造解析に関する研究(特別電源所在県科学技術振興事業)
近年、ナノメートルオーダーで材料の力学特性の分布を評価できる技術が進展し、ゴムの架橋および補強における不均一構造がゴムの特性を発現するための重要な因子であることが明らかになりつつある。本研究では、未だに構造が解明されていないゴム材料の分子運動の不均一性、およびナノメートルオーダーの空間的不均一性に着目し、不均一構造と力学的物性との関係を明らかにすることで、ゴム材料の物性発現や製造工程におけるイノベーションを目指す。本年度は、ナノ力学物性の空間分布と分子運動性分布の相関関係を明らかにする。
県単独で実施している研究
デニム生地のストレッチ性評価に関する研究
ストレッチ性はジーンズの特性のひとつであり、定量的に評価できることが望ましいが、現在のところ洗い加工の現場では主観評価が主であり、客観的な評価方法は確立されていない。そこで、デニム生地のストレッチ性について、客観的な評価方法の確立を目指す 。
耐食性付与を可能とする窒化処理法の検討
表面改質技術は、熱処理・化学処理・被覆処理などにより、材料表面に母材とは異なる性質を付与する技術である。表面改質技術として、高温窒化(浸窒)処理後に焼入れすることで、高強度な表面を得る方法があり、この技術を活用することで、金属表面に耐食性を付与できる可能性がある。そこで本研究では、低級鋼を対象に、耐食性付与を可能とする窒化処理法の検討を行う。
IoT技術を利用した低コストなDX支援機器開発に関する研究
持続可能な開発目標(SDGs)において、中小規模の事業所など生産現場でもDigital transformation(DX)による既存の設備の有効活用や効率化が求められている。一方で、これを実現する商品群は高価で、設備の改造を要する場合もあり、導入への障壁が高い。そこで、市販のIoTプラットフォームとセンサ群を活用し、安価で小型かつシンプルで後付け出来るDX支援機器の実現を目指す。
電動化に対応した自動車構造材の軽量化に関する基盤研究
自動車要素技術共創コンソーシアムにおいて、工業技術センターでは、「大学の知」と「企業のものづくり技術」のマッチングが求められている。本研究では、自動車構造材の軽量化に関して、ガラス繊維強化熱可塑性プラスチックと金属の接着に関する基盤研究を行う。
非接触牛体測定システムの開発と体重推定への適用
和牛子牛の資質向上を図るためには、子牛の発育を日常的に測定し、飼養管理方法の改善を行うことが重要である。本研究では、昨年度開発した深度カメラによる非接触測定を応用し、子牛の体重を推定する牛体測定システムの構築に取り組む。畜産研究所で育成している子牛を実際に撮影し、実測値と推定値の比較を行いながら精度向上を目指す。
加工温度に基づく加工力・工具摩耗の評価に関する研究
これまでの研究から、NC旋盤での切削加工において、加工力の周波数解析や統計値を利用して工具の摩耗監視と寿命推定の可能性を示してきた。本研究では加工条件を変えて基礎データの取得を行い、加工温度との関連性も検討し、寿命予測の精度の向上を実現する。さらに、工具摩耗の評価のため、NCフライス盤で機上測定できる光学系も構築し、実用化を目指す。
バイオマス素材の活用技術に関する研究
セルロース成分を含む木質バイオマスを超微粉砕処理することにより、セルロースナノファイバーが得られる。このセル ロースナノファイバーは強い親水性を示すため、用途により、セルロースナノファイバーの表面を化学修飾したり、複合化させたりする必要がある。そこで本研究では、このセルロースナノファイバー素材の界面制御技術やナノ粒子との複合化技術を検討し、用途開発を目指す。
企業の皆さまと共同で実施している研究
「実用化技術開発事業」と銘打ち、工業技術センターが掲げる研究テーマに対して、毎年、参画企業を募集して共同研究を実施しています。
分析・解析技術に基づいた高分子複合材料の開発
高分子材料を高性能・高機能化させるためには、その構造の制御することや、フィラー(無機粉体)や他種高分子材料などの異種材料との複合化が重要な要素技術である。この複合材料の構造を制御する基盤となる構造解析に関する技術を開発する。また、高分子(複合)材料の構造を制御し、高性能な高分子(複合)材料の開発に資する。これら解析技術や複合化技術は汎用性が高く各種の高分子(複合)材料の開発に適用できる。
清酒製造現場における課題解決に向けた研究開発
国内飲酒人口の減少による清酒製造数量の低下が進む中、特定名称酒を中心に輸出が増加している。今後、より重要視される高品質化、差別化のためには、各工程における技術力のさらなる向上が必須である。そこで、手造り技術が中心で未だ経験の積み重ねによるところが大きい製造現場における各要素技術の科学的検証と特性評価を行う。
地域資源を活用した高付加価値繊維製品の開発
県内の繊維産業は、海外からの安価な製品の流入による厳しい状況下にあり、国際競争力の強化や高付加価値な製品作りが急務な課題となっている。本年度はセルロース ナノファイバー(CNF)の固着塗布技術及び地域資源を活用した染色技術の確立による高付加価値繊維製品の実用化を目指す。
金属加工製品の環境対応・高機能化を可能とする製造プロセス技術の開発
本事業では、各種産業分野に用いられる金属加工製品のリサイクル性、小型軽量性、易加工性、耐久性の向上を目的に、高品位な組織制御、高精度な成形加工、高機能な表面処理技術による素材の開発および、それを可能とする製造プロセス技術の確立を目指す。
ものづくりの高度化に向けた計測技術の開発
製造現場では異常診断や運転管理の高度化などを目的に、IoTの導入が進展している。しかし、IoT技術をより有効に活用するには、多種多様なデータから必要な情報を高精度に計測する技術が求められる。そこで、測定対象の周囲に配置した複数のセンサから得られる信号を用い、直接測れない物理量を算出する計測技術を開発する。本年度は、開発した工具先端の力計測、乾燥物の品温・水分計測および管内音波の分離計測手法を実証する。