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ダニが媒介する感染症に注意しましょう
ダニが媒介する感染症に注意しましょう。
野外に生息するマダニ類やツツガムシ類は、動物の体液を吸うことで生活環が成り立っています。
人が野外作業や農作業、レジャー等で、これらのダニの生息場所に立ち入ると、ダニに刺咬されることがあります。ダニがウイルスや細菌などを保有している場合、刺咬された人が病気を発症することがあり、国内では日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、つつが虫病などが知られています。日本紅斑熱はマダニ類、つつが虫病はツツガムシの幼虫に刺咬されることにより起こります。またSFTSはマダ二からの感染が一般的ですが、SFTSを発症した動物からも感染するおそれがあります(2017年に、SFTSを発症したイヌからヒトに感染し発症した事例が、また2018年にSFTSを発症したネコからヒトに感染し発症した事例が報告されました(Japanese Journal of Infectious Diseases,72,356-358,2019))。
加えて、2021年には、北海道において、新たなダニ媒介感染症「エゾウイルス熱」が発見される(https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/09/post-904.html)など、新たな知見が報告されています。
これらの感染症にかからないために、野外でのダニ対策を行うとともに、野外でダニに刺咬された後、数日して発熱等の症状が認められた場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
マダニ類について
「マダニ」は、食品等に発生する「コナダニ」や、衣類や寝具に発生する「ヒョウヒダニ」などの家庭内に生息するダニとは種類が異なります。
マダニは、固い外皮に覆われた比較的大型(吸血前で3~4mm)のダニで、主に森林や草地などの屋外に生息しており、市街地周辺でも見られます。
マダニ類に刺咬されないように注意しましょう。
【野外で活動する際の予防のポイント】
- マダニは、主に草むらや藪・森林にいます。このような場所で長時間地面に直接寝転んだり、座ったり、服を置いたりしないようにしましょう。
- 草むらなどに入るときは、長袖、長ズボン、手袋、長靴等を着用しましょう(色の薄い服はくっついたダニを見つけやすくなります)。
- ダニをよせつけないためには、肌の露出部分や服に虫除け剤(マダニ、ツツガムシの忌避を効能としているもの)の使用も有効です。虫除け剤は皮膚の露出部分や、衣服の上から使います(ただし、目、口、耳、傷がある部位、皮膚が過敏な部位には使用しないようにしましょう。乳幼児、小児に使用する場合は注意が必要です。添付されている使用上の注意をよく読んでください。)。
- 帰宅後は、上着や作業着を家の中に持ち込まないようにしましょう。
- 帰宅後はすぐに入浴し、体をよく洗い、新しい服に着替えましょう。入浴やシャワーの時には、ダニが肌についていないかチェックしてください。
- 着ていた服はすぐに洗濯するか、ナイロン袋に入れて口を縛っておきましょう。
【動物と触れ合う際の予防のポイント】
- 屋内のみで飼育されている動物については、ダニ媒介感染症に感染するおそれはありません。一般的な事項として、過剰な触れ合い(キスや口移しでエサを与えたり、動物を布団に入れて寝ることなど)は控えましょう。
- 動物に触ったら必ず手を洗いましょう。
- ペットにダニがつかないように、ダニ除け剤などで予防しましょう。ダニがついていたときは、動物用のダニ駆除剤等で適切に駆除しましょう。
- 飼育している動物の健康状態の変化に注意し、体調不良の際には動物病院を受診しましょう。
もしマダニ類に刺咬されたら
マダニ類の多くは、人や動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、長時間(数日から、長いもので10日間)吸血します。無理に引き抜こうとすると、マダニの一部が皮膚内に残ったり、ダニの体内や傷ついた皮膚から出る液体に病原体がいる可能性があるので、直接手でダニを取ったり、つぶしたりしないようにしてください。吸血中のマダニに気が付いた際は、医療機関で処置してもらいましょう。
また、マダニに刺咬された後に、発熱等の症状が認められた場合は、早めに医療機関を受診してください。
症状がでたとき
野外活動の後、数日から2週間程度のうちに発熱・発しん等の症状が認められた場合、速やかに医療機関を受診してください。その際、野山や草むらなどに立ち入る機会があったことを伝えてください。
また、取り除いたマダニを保存している場合は、医療機関を受診する際に持参してください。
体調不良の動物と接触後、体に不調を感じたら、早めに医療機関を受診してください。受診する際は、動物の健康状態や接触状況についても伝えてください。
ダニが媒介する感染症
重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)
SFTSウイルスによる感染症です。 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、2011年に初めて特定された新しいウイルス、SFTSウイルスによって引き起こされる病気です。このウイルスを保有している野外のフタトゲチマダニ等のマダニに刺咬されることによって感染します。また、感染者の血液・体液との接触感染や、感染した動物(イヌ・ネコ)からの感染も報告されています。 2009年3月~7月中旬にかけて中国中央部で原因不明の疾患が集団発生したことで本感染症の存在が明らかになり、2011年に原因ウイルスであるSFTSウイルスが確認されました。中国では、フタトゲチマダニやオウシマダニといったマダニ類からウイルスが見つかっており、これらのマダニが活動的になる春から秋に、患者が発生しています。 |
フタトゲチマダニ(成虫)
岡山県環境保健センター撮影 |
日本紅斑熱
日本紅斑熱リケッチア( Rickettsia japonica )という細菌による感染症です。 日本紅斑熱は、リケッチア・ジャポニカ( 日本名 : 日本紅斑熱リケッチア )という細菌によって発症する病気で、病原体を持っている野外のマダニに刺咬されることで感染します。マダニは、野山、畑、河川敷等に生息していますが、全ての個体が病原体を持っているわけではありません。人間が、病原体を保有するマダニの生息場所に立ち入り、刺咬されることで感染します。人から人への感染はありません。刺咬されてから2~8日後に高熱と発しんで発症し、重症の場合は死に至ることもあります。夏から初冬にかけて多く発生しますが、真冬を除いてほぼ1年中感染する可能性があり、全国では毎年100名以上の患者が報告されており、近年では300~400名ほどと増加傾向を示しています。岡山県では2009年10月に、初めての患者が報告されて以来、毎年10名未満の報告が継続していましたが、近年増加傾向を示しています。 |
ヤマアラシチマダニ(成虫)
岡山県環境保健センター撮影 |
つつが虫病
つつが虫病リケッチア( Orientia tsutsugamushi )による感染症です。 つつが虫病は、オリエンチア・ツツガムシ( 日本名 : つつが虫病リケッチア )という細菌によって発症する病気です。この病原体を保有している野外の小型のダニの一種であるツツガムシの幼虫に刺咬されることにより起こります。ツツガムシは林、草むら、河川敷などの土の中に生息していますが、全てのツツガムシが病原体を持っているわけではありません。作業、レジャーなどの活動の際、人間が病原体を保有するツツガムシ(有毒ダニ)の生息場所に立ち入り、刺咬されることで感染します。自然が豊かな地域では、自宅周辺で刺咬されて感染することもあります。人から人への感染はありません。刺咬されてから5~14日後に高熱と発しんで発症します。重症の場合は死に至ることもあります。 |
タテツツガムシ(幼虫) |